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「失業保険(失業手当)」を受け取れるのはどんな人?雇用保険の受給ルールを社労士が解説

「失業保険」「失業手当」「失業給付金」などとも呼ばれる雇用保険の基本手当。会社を辞めて失業状態にある人は、再就職を目指す期間に条件を満たせば一定額の手当をもらえます。倒産やリストラではなく、自分の意思で仕事を辞めた人も受給対象になる場合があります。 どんな人が、どのような条件で受給できるのか、受給期間、金額の計算方法、申請の流れについて紹介します。(監修:社会保険労務士法人シグナル 特定社会保険労務士 有馬美帆さん)
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「失業保険(失業手当)」を受け取れるのはどんな人?雇用保険の受給ルールを社労士が解説

「失業保険」「失業手当」「失業給付金」などとも呼ばれる雇用保険の基本手当。会社を辞めて失業状態にある人は、再就職を目指す期間に条件を満たせば一定額の手当をもらえます。倒産やリストラではなく、自分の意思で仕事を辞めた人も受給対象になる場合があります。 どんな人が、どのような条件で受給できるのか、受給期間、金額の計算方法、申請の流れについて紹介します。(監修:社会保険労務士法人シグナル 特定社会保険労務士 有馬美帆さん)
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失業保険(雇用保険)とは?

失業保険(雇用保険)は、失業中の人(離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にある人)が生活の心配をせず新しい仕事を探すために設けられた制度です。

これまで雇用保険料を納めていた人は、一定の条件を満たせばハローワークを通して手当を受け取ることができます。

失業保険(雇用保険)の受給条件

退職の理由によって失業保険(雇用保険)の受給条件は異なります。

自己都合退職の場合

自分の意思で退職した人の受給条件は下記になります。

  1. 現在、失業している(職に就いていない)
  2. 退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上ある
  3. ハローワークで求職の申し込みをしている

 

失業している、つまり生活の基礎となる主な収入源が見つかっていない人が受給対象ですが、失業保険(雇用保険)をもらいながらアルバイト・パートとして就業できるケースもあります(詳細は後述)。

「特定受給資格者」、「特定理由離職者」の場合

会社都合や、やむを得ない理由で離職した人の受給条件は下記になります。

  1. 現在、失業している(職に就いていない)
  2. 離職の日以前1年間に、雇用保険加入期間が通算6カ月以上ある
  3. ハローワークで求職の申し込みをしている

 

特定受給資格者とは
  • 企業の倒産、解雇など会社都合で退職した人

 

特定理由離職者とは
  • 有期雇用契約の期間が満了し、更新を希望したのにかなわなかった人
  • 体力や心身の健康に困難があり離職した人
  • 妊娠、出産、育児を理由に離職し、雇用保険の受給期間の延長措置を受けた人
  • 父や母の扶養・看護など、家庭事情の急変により離職した人
  • 配偶者や扶養親族との別居が困難になり離職した人
  • 結婚、育児、転居などの特定の理由で通勤が難しくなり離職した人
  • 人員整理など希望退職者の募集に応じて離職した人

 

自分が受給条件に当てはまるかわからない

雇用保険について普段から意識することがなかった人は、自分が受給条件に当てはまるか判断できないかもしれません。受給を希望する人は、まずはハローワークのサイト上で詳細を確認してみましょう。

仕事探しや職業相談などは、全国各地のハローワークで対応しています。ただし、最初の登録と失業保険の受給手続きは自分の住民票がある市町村のハローワークで行うことになります。

雇用保険に加入していたかわからない

そもそも「雇用保険を納めた覚えがない」という人は、在職時に企業からもらった給与明細を確認してみましょう。給与から「雇用保険」の項目で天引きされていれば、あなたは雇用保険料を納めているはずです。

しかし、まれに雇用保険料を天引きしていながら、従業員を雇用保険に加入させていない企業もあります。雇用保険に加入すると「雇用保険被保険者証」などの書類が交付されます。この書類を企業が預かったままの場合もありますので、まずはそちらを確認してみてください。雇用保険に加入していたかどうかは、ハローワークに問い合わせて確認することも可能です。

失業保険(雇用保険)の受給期間

手当をどのくらいの期間もらえるか(所定給付日数)は、主に下記を考慮して決定されます。

  • 離職理由
  • 離職時の年齢
  • 在職時に、雇用保険を納めてきた期間(雇用保険の加入期間)

 

自己都合退職の場合

雇用保険の
加入期間
1年未満 1年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
所定給付日数 90日 120日 150日

 

「特定受給資格者」、「特定理由離職者」の場合

ハローワーク インターネットサービス「1. 特定受給資格者及び一部の特定理由離職者(※補足1)(3. 就職困難者を除く)」より引用

受給額の計算方法

失業保険(雇用保険)の受給額は、以下の要素が関係します。

  • 賃金日額……在職時の直近6カ月間の賃金合計額(賞与は除く)を、概算で日割りした金額
  • 基本手当日額……1日あたりの給付金額
  • 給付日数……手当をもらえる期間(受給期間の表を確認する)

受給額を計算してみましょう。

1.賃金日額を計算する

賃金日額 = 在職時の直近6カ月間の賃金合計額 ÷ 180

 

2. 基本手当日額を計算する

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50%~80%)

 

給付率は、賃金日額の低い人ほど高水準になります。また、60~64歳の給付率は、45%~80%です。

なお、基本手当日額には上限が定められています。変更されることがあるため、詳細は厚生労働省の最新資料を確認しましょう。

今回は2022年8月1日以降の基本手当日額を参考にしています。

3.受給額を計算する

受給額 = 基本手当日額 × 給付日数

 

<計算例>

●自己都合で退職したAさんの場合
(24歳の会社員、月給24万円、2年勤務)

賃金日額 = x
基本手当日額 = y
給付日数 = z

x =24万円 × 6カ月 ÷180 = 約8,000円
y = x × 0.8 - 0.3{(x-5,030) ÷7,350}x = 5,430円
受給額 = y × z = 5,430円 × 90日 = 48万8,700円

●会社都合で退職したBさんの場合
(28歳の会社員、月給26万円、6年勤務)

賃金日額 = x
基本手当日額 = y
給付日数 = z

x = 26万円 × 6カ月 ÷180 = 約8,666円
y = x × 0.8 - 0.3{(x-5,030) ÷7,350}x = 5,646円
受給額 = y × z = 5,646円× 120日 = 67万7,520円

いつから受給される? 申請の流れ

  1. ハローワークで求職を申し込む
    離職票と受付票を提出します。これらの書類を受け取ったハローワークでは、失業の認定作業に入ります。
  2. 待期する(申込み日を含む7日間)
    失業の認定を受けるまで、離職の理由を問わず7日間の待機期間があります(土曜日・日曜日・祝日を含む)。待機期間中に、申込者が本当に失業しているかどうかをハローワーク側で確認します。この期間は就業することができません。
  3. 雇用保険説明会に出席する
    ハローワークで説明会に参加します。自分の「失業認定日」が知らされ、必要書類が配布されます。
  4. 失業認定日にハローワークに行く
    指定された失業認定日にハローワークに行き、就職活動の状況(求職活動実績)を書類に記入します。失業認定日は、4週間に一度です。

     

    自己都合で退職した人は、2の待期期間が満了した翌日から2カ月間の「給付制限」があります。この期間は給付金を受け取ることができません。もしこの期間に再就職できた場合は、別途再就職手当をもらえるケースがあります。
  5. 給付金が振り込まれる
    振り込み時期の目安は、4の失業認定日から約1週間程度です。
  6. 再就職する、もしくは給付期限の終了時を迎えるまで、4と5を繰り返す

 

受給時の注意点・ポイント

一度手当をもらうと、過去の失業保険(雇用保険)の加入期間がリセットされる

失業手当(雇用保険)を受給した後、新しい職に就いて雇用保険に再加入すると、雇用保険の加入期間はリセットされた状態になります。

もし転職後にまたすぐ退職した場合、基本的には失業手当がもらえません。新しい職に就く前に受給していた失業手当に未受給分があった場合は、手続を取ることでその分を受給できるケースもあります。ただし、後述の再就職手当を受け取っている場合には、再就職手当分は引かれて受給することになります。

失業保険(雇用保険)の受給中にアルバイトやパートとして働くことも可能

受給中であってもアルバイトやパートとして働くことはできますが、働き方の条件があります。

失業保険(雇用保険)の受給対象から外れるほど働いてしまうと、受給額や受給日数に影響することがあるので、注意しましょう。また、失業認定日にアルバイトやパートで働いたことを申告しないと、失業手当の不正受給と見なされる可能性があります。

<失業保険(雇用保険)の受給対象から外れてしまう場合>

  • 待期期間(7日間)中に働く
  • 雇用保険の加入対象(1週間の所定労働時間が20時間以上、もしくは31日以上の雇用が見込まれる場合)になるほど働く

 

<支給時期が先送りされる場合>

  • 1日4時間以上働く

 

不正受給にならないよう注意する

下記のように偽りの申告をすると、失業保険(雇用保険)の不正受給と見なされ、ペナルティが科されます。

<不正受給の例>

  • 実際には行っていない求職活動を実績として申告する
  • 就職や就労(パート、アルバイト、派遣就業、試用期間、研修期間、日雇などを含む)を申告しない
  • 自営や請負により事業を始めていることを申告しない
  • 内職や手伝いをした事実、その収入があることを申告しない

 

<ペナルティ>

不正行為があった日以降は、基本手当などが一切支給されません。以下の金額の返還・納付が命ぜられます。

  • 不正に受給した基本手当などの相当額(不正受給金額)
  • 直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額

 

つまり、不正に受給した金額の3倍にあたる金額を返すことになります(いわゆる「3倍返し」)。このようなことがないよう、十分に気をつけましょう。

再就職手当をもらえる可能性がある

再就職手当は、失業手当の受給資格の決定を受けた後に早期に安定した職業に就いた場合などに支給されるもので、ハローワークからの「お祝い金」とも呼ばれています。

国からすると、失業された方が早い段階で再び社会で力を発揮されることが好ましいため、早期の再就職を促進する趣旨からこの手当を設けています。

再就職手当の額は、就職等をする前日までの、失業手当の支給残日数によって給付率が異なります。

  • 支給日数を所定給付日数の3分の2以上残して早期に再就職した場合
    →失業手当の支給残日数の70%の金額
  • 支給日数を所定給付日数の3分の1以上残して早期に再就職した場合
    →失業手当の支給残日数の60%の金額

 

また、主に以下の要件を全て満たす必要があります。

  • 再就職先で1年を超えて勤務することが確実であると認められること
  • 離職前の事業主や、その関連事業主への再就職ではないこと
  • 就職日前3年以内の就職について、再就職手当等の支給を受けていないこと

退職後の不安や失業保険(雇用保険)の不明点を解決し、自信を持って転職活動を進めよう

会社を辞める際、今後の生活費や自分の経済状況に不安を覚える人もいるでしょう。退職後に再就職を目指す場合、失業保険(雇用保険)を活用する手もあります。受給条件や金額、受給時期について、まずはハローワークの窓口で相談してみるのもいいでしょう。

※記事内で紹介した法制度やサービスは記事公開時点での情報です。

プロフィール:
社会保険労務士法人シグナル代表 特定社会保険労務士
有馬美帆さん
IPO支援、労使トラブル予防・相談、就業規則作成、ハラスメント防止、各種セミナー講師、執筆などの活動中。企業の成長フェーズに応じ、一歩先回りした組織力強化コンサルティングを得意とする。

https://note.com/sharoushisignal/

文:森夏紀/ノオト

編集:リブセンス + ノオト

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