キーエンスでは、高収益を実現させるために営業ノウハウのマニュアル化を実施しています。ノウハウがあることで社員の能力のバラツキを和らげ、安定して高い利益を生み出し続けるのです。

しかし、それがかえってマニュアル人間を生む温床になっている、と指摘する声もあります。枠から外れた仕事を行いにくいということでは個性も発揮できません。また、社員からの積極的な発案の機会も奪っているという見方もできるでしょう。

キーエンスの営業はマニュアル化が進むとともに、個々の社員への提案商品の割り当ても特徴的です。営業社員になった時点で担当する商品が決まり、それを10年から20年というスパンで販売していかなければなりません。

好意的に見れば、それだけキーエンスの商品寿命が長いということではありますが、社員にとっては同じ作業ばかりが続くように感じてしまいます。特に、向上心や成長への意欲が高い人ほど、こうしたルーティン作業に嫌気がさしてしまうのでしょう。

キーエンスの退職理由に「激務」を挙げる人は少なくありません。なかには、7時半から21時過ぎまで働いている社員もいるなど、その激務さを物語っています。9時から18時を定時だとすると、この場合の残業時間は月80時間の過労死ラインを簡単に超えます。

ただ、キーエンスでは現在、21時半以降の残業を禁止したり、接待の厳禁化など、長時間労働を是正する働き方改革が進んでいます。あとは、この制度の枠組みに、どのように社員の働き方を適用させていくか、その具体的な方法が必要となってくるでしょう。