2016年5月、ベネッセホールディングス(以下、ベネッセ)原田泳幸会長兼社長の退任が発表され、大きな話題となったことは記憶に新しいですよね。
2014年の就任直後、約2,895万件の個人情報漏えいが発覚。信頼回復や体制の立て直しのために奔走しましたが、主力事業の通信教育講座の会員数が回復することはなく業績は右肩下がり。その責任を取る形での退任となりました。原田氏といえば、アップル日本法人や日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルド)のトップを歴任した輝かしい経歴の持ち主。巷ではよく“プロ経営者”と紹介されています。
そんな“プロ経営者”原田氏を、従業員はどのように見ていたのでしょうか? 2004年のマクドナルド社長時代から現在のベネッセ会長兼社長までの約12年の間に、転職会議に寄せられた原田氏に関連する約400件のクチコミから、プロ経営者の素顔をひもといていきましょう。
“破壊”と“再生”に打って出たマクドナルド時代
2004年~2014年
- ビジョンを明確に示す力がハンパなくある。顧客の客単価を上げたり客数を増やしたりする施策がうまくいっていた。本来であれば同時に追求することを考えてしまいがちではあるが、片方ずつにとりくみ、成功していった。この人についていけば業績は拡大する、うまくいくと思えるため、不安なく日々の業務にとりくめるようになることが大きかった。(2006年/男性/営業マネージャー・管理職)
- 原田氏が就任してからの体制には賛否両論あるが、私個人の考えとしては経営、現場のシステムは効率化され、また商品の質自体はよいものが保たれやすいシステムにはなっていると思う。(2010年/男性)
- 2004年にホールディングスのCEOに就任してからの7年間で、直営店とフランチャイジー(FC)を合わせた全店売上高は1300億円増。就任前は7年連続マイナス成長だったマクドナルドが2004年の原田社長就任後は8年連続でプラス成長させた。2004年に日本マクドナルド社長に就任すると、100円マックの展開や不採算店の閉鎖などを積極的に行って収益基盤を強化した。(2010年/男性/販売・接客・ホールサービス)
- 当時は時代の流れに乗って100円メニューを充実させたことには満足している。それによって「時代の勝ち組」とまで呼ばれた。また、その絶対的なカリスマ性もとても魅力的だった。統率力があり、仕事に関してとても情熱があると客観的に伝わった。しかし、現場の事しか考えていない社員まではその情熱が届いていないと感じた。(2012年/男性/法人営業)
- ワンマン経営者。一時期は悪業績の中、アメリカの手法を取り入れることでサービス面を向上させてきました。そして日本独自のクーポン券、また携帯電話でのクーポン券の配布などを行うことで業績を獲得させていきました。(2013年/男性/店長・店長候補)
- 非常にアグレッシブで社員の意見・お客様の意見に耳を傾け戦略をたてていました。又プライベートでも音楽やスポーツをしており非常に熱い社長と感じました。しかし、非常にリーダーシップが強い分他の社員は従う事が多く、納得いかない社員は退職している状況が見られました。(2013年/男性/営業マネージャー・管理職)
マクドナルド社長に就任した原田氏は、経営・現場のシステム効率化や強いリーダーシップによるワンマン経営といった典型的なアメリカ型経営を展開。クチコミからも、従業員を束ねる統率力やカリスマ性が伺えます。積極的な不採算店の閉鎖や、「100円マック」などの新たな事業展開を打ち出すことにより、7年間も減少し続けていた業績が嘘のようなV字回復を見せました。その実績もあってか、従業員からも厚い信頼が寄せられている印象です。
ベネッセでは、旧態依然な“風土”に“風穴”を空ける
2014年~現在
- 真面目で、与えられた業務をこなす分においてはとても優秀。教育を志す学歴の高い人間が新卒で入るということもあり、いわゆる地頭がいい人が多いと思います。管理職についても同様で、企画書においてもロジックを非常に重んじます。ただし、一般的な傾向として、「前提を疑う」ことに慣れていません。長く進研ゼミというドル箱事業を運営してきたため、「前例踏襲の上改善」という文化に覆われています。その改善のためのロジックづくりには非常に長けているのですが、そもそもどうなのか、という話になると考えることを避けてしまうようなところがあります(なので、戦略コンサルから転職してきたような人が、あまり活躍できないところがありました。)。しかし、2014年の原田社長の就任と個人情報漏えいを機に、この文化は否が応でも変わらざるを得なくなってきます。変革を作り出すことに長けたリーダーは、むしろこれから求められるようになると思います。(2008年/男性/新規事業・事業開発)
- Mac、マックの社長の経歴から、これまでとはスケールとスピード感が全然違うグローバルスタイルな人です。若手と女性、そしてスタッフを大切にしています。社員からは、やはり賛否両論ありますね。いい思いをしている人は好評ですが、40代以上の男性社員にとっては、かなり厳しい選択を強いられるため、不満も出ています。(2014年/男性/人事)
- もともとは一族経営であったところから比べ、外部から招いた社長であるという点、プロの経営者であるという点においては改革の遂行においてよい人材だと感じる。しかしながら、中でのポストがどんどん減っていく、人員整理も行うという方針が急にでたことで社内の受け止め方に関してはかなり個人差がある。個人的には期待したい。(2014年/女性/法人営業)
- アップルやマクドナルドで社長だった有名な人。原田氏は、コストダウンや価格戦略を重視するアメリカ型の経営者であり、日本マクドナルド創業者の藤田氏が亡くなった時に社葬どころか会社として偲ぶ会さえ営まなかった人物です。そういう合理的思考の経営者がベネッセの適切な舵取りと変革を担うのは極めて難しいでしょう。(2014年/男性/編集者)
- 従来と比べてトップダウンの比重が高まったのは間違いないと思います。トップから遠い立場であれば、会社が大きく変化しているなかでやりがいを見つけることが出来るかもしれません。(2014年/男性/一般事務)
飲食業界から一転、通信教育最大手「ベネッセ」の会長兼社長に就任した原田氏。ベネッセでもマクドナルド同様、コストダウンや価格戦略、トップダウンによるアメリカ型経営を展開しているようです。
“進研ゼミというドル箱事業を運営してきたため、『前例踏襲の上改善』という文化に覆われています”というクチコミからみるに、ベネッセは旧態依然とした企業風土。原田氏は経営方針や新規事業を通して、その企業風土に良くも悪くも風穴を空ける変革・改革者という声が目立ちます。
クチコミから見えた、原田式「プロ経営」3つのポイント
マクドナルドとベネッセのクチコミを通して、共通性や類似性のあるいくつかのキーワードが浮かび上がってきました。それらを分類すると、「アメリカ型経営」「トップダウン」「パラダイムシフト」という3つのポイントにまとめることができそう。従業員が言うこれらのポイントは、原田氏がプロ経営者たらしめる所以といえるのかもしれません。さっそく、関連キーワードともに見てみましょう。
◆アメリカ型経営
クチコミでは「アメリカ型の経営者」「グローバルスタイル」「アメリカの手法」という言葉で形容されています。アメリカ型は、短期雇用・実力主義的な雇用慣行で目まぐるしく従業員の新陳代謝が行われ、効率化やコストダウンなどに徹底的な姿勢をみせる経営スタイルのよう。日本の終身雇用や年功序列とは全くの逆のスタイルといえそうです。
◆トップダウン
クチコミの中には「トップダウン」のみならず、「リーダーシップ」「ワンマン経営」「カリスマ」「統率力」などの言葉がちらほら。ボトムアップで慎重に合議を行う日本型経営に対して、アメリカ型経営を行う原田氏は、トップダウンでスピーディーな意思決定を敢行することが従業員の声からも伺えます。
◆パラダイムシフト
クチコミでは「改革」「変革」などの言葉で語られています。旧態依然とした企業風土を変えるための大きな変革や赤字を黒字にするための既存事業を撤廃する決断力、新規事業を推し進める首尾一貫とした姿勢など、従業員の声からも、原田氏の経営にはパラダイムシフトが付きものといった印象です。
プロ経営者退任による変化は、“吉”と出るか“凶”と出るか?
原田氏は、低迷していたマクドナルドの業績を一時的に改善させた経営手腕が高く評価され、創業家・福武總一郎氏に請われてベネッセの会長兼社長の座に就くことに。そして、就任後間もなくして発覚した「個人情報漏えい問題」…。
問題発覚以前から、主力事業である「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」の会員数は漸減傾向にありましたが、情報漏えい問題が拍車をかけることになり、退任にまで追い込まれました。情報漏えい問題だけが原因のすべてではないと思いますが、輝かしい経歴と実績を併せ持つ“プロ経営者”原田氏ですら乗りこなせなかった嵐吹き荒れるベネッセ。そんな中、原田氏の後任として白羽の矢が立てられたのが、副社長の福原賢一氏。同氏は、野村リサーチ・アンド・アドバイザリー社長、野村ヒューマンキャピタル・ソリューション社長などを歴任した、いわば金融のプロフェッショナル。そして、原田氏がマクドナルドの社長に就任した2004年に、ベネッセに入社した古参組でもあります。
企業の内情を良く知る新社長が、ベネッセという船をどのように舵取りしていくのか今後の動向から目が離せません。
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