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ラジコンマニアから始まったドローンへの挑戦:エンルート代表・伊豆智幸さんインタビュー【前編】

空の産業革命を起こすといわれ、各種企業が続々と参入を表明している急成長中のドローン業界。人が足を踏み入れることが困難な災害の現場で測量や救命の役割を担うなど、多方面での活躍が期待されています。そんな産業用ドローンの製造・設計を行うのが、伊豆智幸さんが代表を務めるエンルート。2006年に日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)を退職し、趣味だったラジコンを仕事にするため同社を設立した伊豆さんが、未開拓ともいえる領域であったドローン業界に舵を切ったその理由とは?
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ラジコンマニアから始まったドローンへの挑戦:エンルート代表・伊豆智幸さんインタビュー【前編】

空の産業革命を起こすといわれ、各種企業が続々と参入を表明している急成長中のドローン業界。人が足を踏み入れることが困難な災害の現場で測量や救命の役割を担うなど、多方面での活躍が期待されています。そんな産業用ドローンの製造・設計を行うのが、伊豆智幸さんが代表を務めるエンルート。2006年に日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)を退職し、趣味だったラジコンを仕事にするため同社を設立した伊豆さんが、未開拓ともいえる領域であったドローン業界に舵を切ったその理由とは?
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ラジコン、アマチュア無線にオーディオ自作、 趣味はどっぷり電子工学

――大学では電子工学科を専攻されましたが、学生時代はどのようなものに興味を持っていましたか?

当時は趣味でラジコン、アマチュア無線をやったり、オーディオアンプを自作したりする学生で、電気や機械など電子回路全般に興味を持っていました。大学ではマイクロ波の研究をしていて、最初の就職先の日本HPに勤めるきっかけになったのも、大学の研究室で同社のネットワークアナライザーという高周波の計測器を使ったマイクロ波の研究をしていたからなんです。日本HPは当時、計量器メーカーとして有名で、高周波に強いところに惹かれて入社することを決めました。

 

――日本HPに入社されたのは、まだインターネットが一般的に普及する前ですね。

そうですね。入社が1985年なので、インターネットが登場する以前の話です。私が新人研修を受ける頃が、ちょうど日本HPがコンピューターに力を入れ始めた時期で、多少知識があったこともあって、コンピューター系の部署に配属されました。当時はまだPCが登場する前で、インターネットが登場するまでの10年近くはマイコンやCAD、エンジニアリングワークステーションなどを担当していました。

 

――最初の会社では、どのようなやりがいを感じていましたか?

初めの頃は、セールスやクライアントのソリューションの提案などをしていたんですが、お客さんの要件・要望を叶えるためにどういう提案をするかということを考え、その提案をご評価いただき買っていただけることに喜びを感じていました。

それからマーケティングの部署に移り、コンカレント・エンジニアリングやCRM(顧客関係管理)、One to Oneマーケティングなどのコンサルを経験し、時代的にも追い風のシステムだったので、支持されていく実感や手応えを感じていました。日本HPは、とにかく新しいことを取り入れる会社で、常に新しい技術が入ってくる。私自身も新しいもの好きで、例えば車にしてもいろんなガジェットにしても、常に最新型が欲しいタイプで。マーケティングを通じて誰よりも早く海外の先進技術にリーチして、それをお客さんにプレゼンできるというのは良いモチベーションになっていました。開発からはじまり、インターネットが流行りだしてからは情報システムへと、時代の流れとともに新しい技術の最前線に携われたことは楽しかったですね。

 

会社で培ったマーケティングのノウハウをラジコンの世界に

――そんなに充実した会社を辞めてまで起業しようと思ったのはなぜでしょうか?

今振り返っても、当時はITバブル真っ盛りで、仕事の内容にも待遇にも満足していました。何より、クライアントが仕事を頼むのは、あくまで看板に対してであって、個人ではない。責任をとるのも個人ではなく会社ということを意識していましたので、自分に実力があると思って起業しようなんて考えはどこかで無謀だと思っていました。

 

――そこは現実を見据えていらっしゃったんですね。

勘違いはしてなかったつもりです。その一方で、趣味のラジコンも続けていて、土日は毎週飛行場に行ってラジコンを飛ばしていたのですが、昔はエンジン動力であったのが、リチウムポリマー電池やブラシレスモーターというような技術が出てきて電動で動くようになり、すごく面白くなってきたんです。

そんな時、同じ趣味の友人がやっていたラジコン関係のECサイトをアドバイザーとして手伝うことになって。私はマニアを自負しているので、自分が良い物、欲しいものを集めたら、お客さんも良い、欲しいと思ってくれて、人気が出始めたんですね。そうするうちに売り上げの見通しがついたので、こっちで勝負してみようと起業することにしました。

マニアだから、誰よりもエキスパートだという自信があった

――ラジコンで起業すると決めたら躊躇はなかったということでしょうか?

まず、ラジコンについては、私は誰よりもマニアだという自信がありました。操縦の上手い下手ということよりも、ラジコンの楽しみ方についても自分なりの思想を持っていて、面白いと感じてくれた仲間が集まるクラブも作っていました。これに加えて、私には会社が叩き込んでくれたセールスやマーケティングのスキルがありました。

日本HPには、ビジネスプランニングの方法など、MBAを取れるくらい徹底的に教育してくれるしっかりとした土壌があったので、ある意味ラジコン業界は簡単だぞと思ったんですよ(笑)。そこまでマーケティングの視点でビジネスをするラジコンの会社がなかったので、インターネットや、EC サイトのノウハウがあり、調達力や目利きでも自信がある私が負けるはずはないという勝算は持っていました。

 

おじさんだけのラジコン業界から若者でにぎわうドローン市場へ

――そこから開始数年でラジコンに見切りをつけて、ドローン業界に参入するというのもかなりチャレンジングに思えるのですが。
 

はじめはラジコンでシェアを獲得しようと思っていました。売り上げも年間、約20パーセントのペースで成長していたので、3年くらいはトントン拍子だったんですね。設備投資や機械投資ができたので、本当に自分の作りたいものが作れるようになってきました。とはいえ、全体でみるとラジコン業界は右肩下がりのマーケット。最近、ラジコンの模型屋さんなんて見かけることが少ないでしょう?

 

――確かに見かけませんね。

どんどん店が潰れていっているんですが、それはラジコン業界の年齢層が上がっていて、若い人たちが入ってこないから。おじさんたちは古い技術に固執して、若い人たちはおじさんたちに頭を下げてまで教えてもらおうとは思わない。イベントを開催しても若い人は来ないし、どうしたものかと思っていた矢先、東京工業大学の体育館で「Make: Japan」という電子工作関連のイベントが開かれていて、それに行ってみたんです。

そこでは若い学生たちが自作したカスタムドローンなどの自分の好きな作品を発表していました。傍目にも非常にオープンで入りやすい電子工作の雰囲気があって。ラジコンのように誰か先生の指導を仰がないと飛ばせるようにならない技術と比べると、何の制限もなく自分たちが好きなように自分たちの感性でものづくりを行えるというのが、今の時代に適していると感じて、直感的にこっちに舵を切ったほうがいいと思ったんです。

 

――マーケットが拡大することを見越して、ドローン業界に参入したんですね。

そうですね。ドローンはラジコンの技術に加えて、私がそもそも得意であった電子工作の技術がセットになった領域でしたので、これはいいなと。国もドローンの研究・開発に補助金を出したりしていますから、大学に勤める研究者の方々と一緒に産業用ドローンの開発に邁進していきました。ロボット工学の先生からも「エンルートの機材は使える」とお墨付きをもらえたりしたのも心強かったですね。

後編へつづく

 

【プロフィール】
株式会社エンルート代表取締役。1985年近畿大学理工学部電子工学科卒業後、日本ヒューレット・パッカードに入社。2006年に長年の趣味だったラジコンの製造販売を行うエンルートを設立。現在は、マルチコプターをはじめとする産業用無人機の設計、製造、運用などの事業を展開。

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