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スキルの棚卸しで自分の強みを見定めること:エンルート代表・伊豆智幸さんインタビュー【後編】

「空の産業革命」を起こすといわれるドローン分野の第一人者として注目されているエンルート代表・伊豆智幸さん。前編では趣味のラジコンを仕事にするために起業し、ドローンにシフトした経緯をお聞きしましたが、後編では伊豆さんの仕事観を立脚点にして、好きなことを仕事にする上で大切な姿勢や、ドローン業界で求められる人材事情についてもお聞きしました。
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スキルの棚卸しで自分の強みを見定めること:エンルート代表・伊豆智幸さんインタビュー【後編】

「空の産業革命」を起こすといわれるドローン分野の第一人者として注目されているエンルート代表・伊豆智幸さん。前編では趣味のラジコンを仕事にするために起業し、ドローンにシフトした経緯をお聞きしましたが、後編では伊豆さんの仕事観を立脚点にして、好きなことを仕事にする上で大切な姿勢や、ドローン業界で求められる人材事情についてもお聞きしました。
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上司を説得するだけの材料を自分に持つこと

――これまで伊豆さんは自分の得意領域を作り、仕事にしてきたという印象がありますが、それを実現させる上でどのようなことに気を配っていますか?

仕事で自分の力を発揮するためには、まず自分のスキルを棚卸しすることが必要ですよね。自分は何が得意で、人よりも秀でているところはどこかを探ると、自分の価値が分かってくる。同時に、自分が挑戦したい仕事やポジションをもらえるようなアプローチも必要で。私がいた日本HPには、半年に一度「ジョブ・ディスクリプション」という売り手と買い手の交渉事があって。会社という買い手に対して、売り手である自分たちはこのくらいの仕事をするので、このくらいのお給料をくださいと伝えなくてはならない。そして、その分だけの成果を出す。自分がやりたいことや得意なこと、会社に貢献できることを提案する機会に恵まれました。

――必ずしもすべての企業が個人の希望を聞ける訳ではないと思うのですが。

もちろん、電気関係の会社でドーナツを売りたいという希望は叶いませんが、少なくとも会社に入ったら、その中で折り合いのつく仕事の領域があるはずで、そこを上司に話す交渉力が必要だと思うんです。若い人にはコミュニケーション能力を高めて、上司に「新しいテクノロジーがあるから、これを事業にしましょうよ」というパッションをぶつけるような心をぜひ持っていただきたいですね。そうした提案を繰り返しても理解されなくて、はじめて「独立します」になるんだと思います。そのためには、人に提案できるだけ自分を磨いていかなくてはいけないし、説得するための材料を持っていなくてはならない。だからこそ私は常に“自分のポートフォリオ”というものを意識していましたね。

顧客は神様ではない。良きアドバイザーになること

――伊豆さんにとって自分の強みとなるポートフォリオは、ラジコンでありドローンとなる電子工学だったのですね。

そうですね。お寿司屋さんなら寿司ネタ10種類持っていて、それがポートフォリオになる。お客さんに「貝類が好きですか?光りものが好きですか?」と聞いて、光りものが好きと言われたらそれを提案する。光りものに金箔をつけて欲しいとお客さんが言ったら、「それは美味しくならないし高くなりますよ」とアドバイスもする。でもお客さんに特別な理由があれば金箔をつけます。そういう風に自分のリソースと、お客様の業務を照らし合わせながら、現実と折り合いを見つけていくことがお客様に評価されるというのが、私の基本的な考え方です。

――産業用ドローンの世界に切り込んでいくエンルートとしては、どのような強みでアプローチをしていくのでしょうか?

お客さんが本当に欲しいものは何か、どう役立つかを考えながら作るという、出口を非常に大事にしています。私は経営者であっても、ボスはお客さんなので、自分の作りたいものを作るんじゃなくて、お客さんの欲しいものを作り、喜ばれて初めてお金をいただく。それがラジコンの時代から、私が目利きとして大切にしている発想なんです。 ただ、お客さんは神様ではなく、希望どおりにすると膨大な予算がかかることもあり、それを私たちは数字とデータで示し、会話をするんです。お客さんにとって適切なアドバイザーになれるかどうかも、お互いが納得できるものを作り上げるために重要なことだと思っています。

無人機が人に代われるすべての分野に商機あり

――これからドローンを通じて叶えていきたいことはありますか?

ドローンというよりも、無人機としてできることは片っ端からやっていきたいと思っています。無人の飛行体や無人の潜水艦など。特に、この技術を喜んでもらえるのは、都会ではなく地方なんですよ。
 

例えば、農家の人たちは今も人力で草刈りをしていますが、無人機を使えばラジコンで遊ぶような感覚で芝刈りをすることができる。獣害は大きな音を立てるロボットで追い払うことができますし、人間に代わり無人機ができることはたくさんあります。農業だけでなく警備、測量、土木、救助、災害、介護、あらゆる部分でパートナーを組み、各チームが持っている得意分野をつなぎ合わせて、大きなソリューションにするというのが私たちの役割だと思っています。過疎化や高齢化していく地方にこそ、こうしたオートメーションの技術が生かされる道があると考えています。
 

――今後も成長が期待されるドローン業界で求められるのは、どのような人材でしょうか?

制御装置を作る電気工学の人や機械工学の人も含めて、あらゆるスキルの人たちにチャンスがあると思っています。さきほどの話のように、農家さんにもビジネスチャンスはありますし、メーカーにもあります。要するに、人ではコストが合わなかったりするものに対して、「ロボットに置き換えればできることはある」という視点を持てる人や、使う側の立場になって提案ができる人すべてにビジネスチャンスがあると思いますよ。ビジョンがある人はそのアイデアを上司に提案したり、温めて研究したりして自分のスキルを棚卸しして、ポートフォリオを増やしていくと、未来は明るいのではないでしょうか。

【プロフィール】
株式会社エンルート代表取締役。1985年近畿大学理工学部電子工学科卒業後、日本ヒューレット・パッカードに入社。2006年に長年の趣味だったラジコンの製造販売を行うエンルートを設立。現在は、マルチコプターをはじめとする産業用無人機の設計、製造、運用などの事業を展開。

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