「災害時のインフラ」という新たな分野への挑戦
――御社のようなソフトウェア関連の会社で漢字の社名は珍しいように思いますが、どのような意図でつけられたのですか?
漢字の社名にはこだわりました。柊は「魔除け」や「お守り」を意味します。弊社の設立は1986年ですが、当時は動かないシステムを作るソフトウェア関連の会社が非常に多く、「そうではなく高品質なソフトウェアで社会に貢献しよう」という想いを、「柊ソフト開発」という社名に込めたのです。
――とても印象に残る社名ですね。現在はどのような事業を中心に展開されているのですか?
設立当初から展開してきた自動車、カメラなどの組込・制御系に加え、Webアプリ開発まで、幅広い技術を最適に組み合わせたシステム開発を行なっています。それらに加え、近年での弊社のトップランナーは「防災」です。
――「防災」は具体的にどのようなものを開発するのですか?
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これまでに行なったのは、港や河川、ダムなどの水位の監視、高速道路の監視、あるいは斜面に鉄パイプを埋め込んで土砂崩れを予測するといった、社会インフラシステムの開発です。弊社のような規模感で国のインフラ部分に関わる事業を展開していることは、一つユニークかもしれません。
災害が起きてパニック状態になると、インターネットや電話回線は混乱します。その状態でいかに信頼性を保ちながら、システムが動くようプログラミングするか。これまで培ってきたITスキルをフル回転させることになりますので、防災の分野はシステムエンジニアにとって、技術的に大きなチャレンジになると思います。
――災害時のインフラは必ず必要です。従来の技術力を活かしながら、新たな分野にも挑戦されているのですね。
優秀なエンジニアとして活躍するための「人間力」を育成
――御社では社員教育にとても力を入れておられますが、技術者を育てるための「社員教育制度」について具体的に教えてください。
「カッツ・モデル」をご存知でしょうか? マネジメントに必要なスキルを「テクニカルスキル(業務遂行能力)」「ヒューマンスキル(対人関係能力)」「コンセプチュアルスキル」の3つに分けて考えるマネジメント育成法です。コンセプチュアルスキルは聞き慣れませんが、「複雑な物事を俯瞰的に捉えることで、本質を見極めて対応する能力」と言い換えることができるでしょう。このカッツ・モデルをベースに、教育全体を考えています。
入社後3年間は最も大きく成長する期間ですから、育成強化期間として特別プログラムを用意しています。テクニカルスキルを身につける場としての独自の研修やeラーニング。ヒューマンスキルを磨くための社内研修では、ファシリテーションやメールの書き方といった講義もあります。コンセプチュアルスキルについては、社内報の作成、行事、採用活動、合宿研修などに関わる中で身につけていただきます。これらを総合的に身につけることが人間力であり、優秀なエンジニアになるためのステップだと考えています。
――エンジニアとはいえ技術力を磨くだけにとどまらず、多岐にわたる能力を身につけることができる仕組みになっているのですね。
常に変化し続けるIT業界では、技術力だけを磨いていたのでは長期にわたっての活躍は難しくなります。特にヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルは口頭で教えるだけでは身につきませんので、「自ら考える」ということを重要視しています。チームで何かに取り組んで、トラブルが発生し、それを解決することで能力が身につく。この一連の流れの中で、最終的に結果を出すための方法論を学びとってほしいと思います。
3年間の育成期間終了後は、個々の強み・弱みに応じて効果的な育成を行ないます。能力のある社員には、会社を動かす練習として各部署間の調整を任せたり、研修時の講師役に抜擢することもあります。私が社長に就任したのは2006年ですが、いずれは社長を社員から育成したいと考えていますので、能力と意欲のある社員には、背伸びする環境下で様々なことに携わってもらいます。
――厳しい面もあるのでしょうが、大きなやりがいにつながりそうですね。
説明会でも、「うちの会社は3年間は他社さんより辛いですよ」と言っています(笑)。実際の社員も渦中にいる時は苦労するようですが、乗り越えると「やってよかった」と思えるようです。私も技術者出身なうえに、会社を立ち上げた当初は苦労の連続だったので、その気持ちはよくわかります。
3年をベースとした社員教育制度を始めて8年ほど経ちますが、最近は社員自らが「こういう教育をした方が良いのではないですか?」と、私に意見をぶつけてきてくれるようになりました。「社員と一緒に事業を組み立てていく」ということが、ようやく実現できるようになってきたかなと思います。
これからのSEとしてのあり方
――先ほど、IT業界は変化が激しいというお話が少し出ました。その中で、長く継続していくために必要なことはなんだと思いますか?
成熟した分野だけを事業展開するのではなく、未成熟の分野も織り交ぜています。当社の事業でいえば現在のトップランナーは防災で、2番手が組込ですが、事業はなくなることを前提にすべきです。なくなった時にセカンドランナーがトップランナーに変わる。それが成熟することだと思うのです。
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もっと下の方にある、いわば「冒険」に近い部分も何パーセントかは展開する必要があり、これが残っていく可能性だってあります。それらの分野がぐるぐる入れ替わっていくことが、永続するための一つの条件ではないかと考えます。ポートフォリオを組んだ事業は大企業では当たり前ですが、当社規模では珍しいのではないでしょうか。
――未成熟の分野にはどのようなものがあるのですか?
PLC(プログラマブルロジックコントローラ) を使った計測器があるのですが、その中に組み込むためのソフトウェアを少し前に作りました。非常にニッチな分野なので、売れるかどうかはわかりません(笑)。だからこそ冒険なのです。また、一言で組込と呼んでいますが、OSのない組込、OSの一部を作る組込、OSと直接つながる部分の組込など、実はまったく違います。いずれは淘汰されても、なくならない分野であることは確かなので、それを見定めながらどこかしらには関わっていきたいと考えています。
最近では、プロジェクトの開発が始まる前段階から当社のエンジニアをメンバーに加えてもらい、ゼロから一緒に事業を作っていく働きかけも行なっています。結果として受託量が増え、利益率も拡大しました。お客様の事業に絡めた製品として水質観測の計測器をPLCで作るなど、単なるソフトハウスの領域から脱却を始めています。
――そう考えると、この先エンジニアの活躍の場もどんどん広がっていきそうですね。
そうでなければ事業をやっていて楽しくないですよね。ですから色々なことを考えて、この先何をすべきかを、辛さではなく面白さだと捉えてやっていければいいですね。
近年「働き方改革」という言葉が注目されていますので、事業内容や教育方針のさらなる効率化が重要視されますが、それでも大事な部分はおさえた、当社なりの方法論を社員と一緒に見出していければ。働き方改革というと、とかく「働く時間を短縮しなさい」という偏った解釈で捉えられがちですが、つまりは多様性だと思うのです。
仕事とプライベートは50:50という考え方はもちろん間違いではありませんが、顧客満足と自己実現は調和させるのが一流のプロであり、ここを目指すのが当社の理念です。本当の意味での多様性を目指すならば、ルールは守りながら、企業ごとに最適な色をどうチョイスしていくのかが、真の意味での「働き方改革」につながるのではないでしょうか。
当たり前のことを当たり前にやり続けたい
――なるほど。御社の今後が楽しみです。御社で働くことで得られる体験はどのようなことでしょうか。
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小さな成功体験を経て大きな役割へ、その過程で得られる成長体験です。当社はまだまだ成長中の企業です。少ない人数で社会にインパクトのある事業に携わるからこそ、得られる経験だと思います。 もちろん途中に様々なハードルはありますが、むしろそのハードルを超えていくことが面白いと思える人であれば、うちの会社は本当に楽しいと思います。わからないことを知るのは楽しいですから、本当は仕事に対してワクワクすべきなのです。
――最後に、御社の今後のビジョンをお聞かせください。
最終的なミッションは、自ら作り自ら売る「メーカー&ベンダー」として事業展開していくことですが、そのために今できることとして、アウトソーサーからビジネスパートナーへ存在価値を高めいくことが重要だと考えています。今はまだ、1~2歩踏み出せたところですね。というのも、我々が従来もっている技術とお客様の技術を組み合わせることで、ビジネスパートナーとして認知されはじめた実感はあります。今度は、お客様が我々だからこそ組みたくなる価値の高いビジネスパートナーとして存在するために、戦略的に踏み出そうと考えているところです。
色々考えてやっているように見えるかもしれませんが、実は昔から当たり前のことを当たり前にやってきただけなのです。それって、誰にでもできることですよね。でも、努力すれば「凡人」は「天才」よりも強いと私は考えていますので、これからも当たり前のことを当たり前にやり続けられる会社でありたいですし、「かっこいい凡人」が集まる会社にしていきたいと思っています。
取材・文/ドラドナッツ・開洋美 撮影/菊池友理
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