景況感に左右されない、常に必要とされる人財とは
――VSNはリーマンショック後、それまでの経営から大きな転換を図ったそうですね。
塩田さん: VSNは創業以来、技術者の特定労働者派遣事業を営んでおり、お客様にITや機械、電気電子、化学などの技術を提供することに注力してきました。新卒を中心に毎年400~500名の社員を積極的に採用して事業を拡大していましたが、リーマンショックをきっかけに、大きな経営改革に乗り出しました。
当時は約2,000名のエンジニアがお客さま先で働いていましたが、半数近い社員が契約終了を避けられない状況に陥りました。しかし、お客さまに必要とされ続ける社員も多く存在したのです。
――逆風時代的な状況下でも契約が継続したエンジニアは、終了を余儀なくされたエンジニアと具体的に何が違ったのでしょうか?
塩田さん:一般的に、派遣エンジニアは、顧客の指揮命令に従った業務を全うするまでで、それ以上は求められないというイメージがあるかと思います。
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ところが当時、契約が継続した社員たちと話をしてみると、お客さまと対等な関係を築き、担当する製品を開発する上での課題点・問題点を自ら見つけ出し、さらにはそれを主体的に改善提案・実行を行っていました。
派遣エンジニアはあくまで第三者であって、お客さまの社内事情に踏み込むべきではないという不文律がありました。しかし、お客さまに求められ続けたエンジニアの特長を見ると、第三者だからこそできる立ち位置でさまざまな部署をつなぎ、次々と課題を解決していく、“真のパートナー”として重宝されていたんですね。
――いずれの現場も課題を抱えていたことは同じで、それを一歩踏み込んで解決に導く人財が求められ続けたということですね。
塩田さん:彼らのような存在こそが、お客さまに必要とされるのだと実感し、そこから派遣エンジニアならではの強みである“現場にいながら第三者視点を擁する”という点にフォーカスし、お客さまの事業に革新をもたらす組織になるべく改革を急ぎました。
どこにもない価値を提供できるエンジニアが勝ち残る
――具体的にはどのような経営改革を行ったのでしょうか?
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塩田さん:この状況(リーマンショック)に耐えうる会社、そして今後、同規模の世界恐慌が起きても影響を受けることのない強靱な組織を作るにはどうしたら良いか、マネジャー職以上の16名による経営戦略チームが編成され、この先50年・100年と会社が永続的に成長していくためにVSNは“何屋になるべきか”を徹底的に議論しました。その中での気づきが、先述した“必要とされ続けるエンジニア像”でした。
彼らの活躍をヒントに、顧客の本質的問題解決に取り組む「バリューチェーン・イノベーター」という比類ないサービスに辿り着きました。
――いわゆる一般的な派遣エンジニアと「バリューチェーン・イノベーター」ではどのような点が異なるのでしょうか?
塩田さん: VSNでは、「バリューチェーン・イノベーター」としてエンジニアには「技術力」「プロジェクトマネージャー」「ファシリテーター」の三つが重要だと伝えています。エンジニアとして技術力は言うまでもなく、お客さまが見過ごしていた問題を発見し、その解決策を網羅的に導き出し、さらにはその問題を解決に導くために周囲を巻き込み推進していくにはプロジェクトマネジメントのスキルも必要です。また、取り組む範囲が広がるほど、さまざまな部署や多くの担当者との細やかな調整が必要となります。そのためのファシリテーションスキルも問題解決には不可欠な能力です。
お客さまが抱える事業課題に真っ向から向き合い、解決していく人財にはこれらの要素が全て必要なのです。
――課題に進言するだけでなく、自ら課題解決までリードできる推進力ですね。
塩田さん:「バリューチェーン・イノベーター」を担うのはエンジニアだけではありません。お客さまとファーストコンタクトを取る営業職の社員には「マーケター」「コンサルタント」「デザイナー」という3つの役割を求めました。
常に世の中の動向には高くアンテナを張り、お客さま先の現状と比較しながらデータに基づいた提言を行う「マーケター」。詳細なヒアリングからお客さまが気づかない課題を引き出す「コンサルタント」(相談役)。そして、解決策を導き出し、その中から有効な施策を立案する「デザイナー」。これまでの営業職にも求められていた視点ではありますが、改めて自身の役割を認識してもらうため、職種を“ソリューションデザイナー”と変更しました。
――肩書を変えることで、与えられたミッションが何なのかをより強く意識することができますね。
塩田さん:こうした改革を「第二創業期」として全社員に伝え、同時に人事諸制度をはじめとするあらゆる組織の姿を刷新していきました。
旧態依然とした制度を廃止し、全てにフェアな評価制度へ
――社内の急激な変革に「ついていけない」という方もいたのではないでしょうか?
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塩田さん:大きな改革でしたから、社員の反応は二分化されました。もちろん、どちらの社員にとっても不利益が生じない制度にするために細心の配慮を図りましたが、より“顧客に、そして世の中に求められる人財”を育成していくために、年功序列をベースにした処遇制度を一切廃止し、年齢ではなく職責に合わせて給与を定める仕組みに変えたことで、職責に合わない働き方をしていた人は結果的にそれまでの給与と差が生じてしまうということに大きな反発もありました。
――転職会議のクチコミを見ても、改革前後のギャップに戸惑いを感じる方の声がありますね。
塩田さん:仕事は年齢や在籍年数だけで保証されるものではない、というメッセージを理解できなかった社員は、憤りをも感じたかもしれません。しかし、年齢や社歴に関係なく、個人の能力を評価し、それに応じた金額が支給される仕組みを構築したため、能力を高めること=昇給につながりやすくなりました。
現在は全社員にこの仕組みを理解してもらえていると思いますし、自身のキャリアと向き合い、どのようにスキルアップするかを自らしっかりと考え、能動的に動いている社員が、結果として処遇の向上を実現しています。
――社員にとってやりがいを感じられる環境を整備することで、お客さまや会社全体にベネフィットをもたらす仕組みを構築できたのですね。
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塩田さん:評価制度だけではなく、自分の活躍を誰かが認めてくれる文化があると、自身の仕事に誇りを持てるようになります。「バリューチェーン・イノベーター」という新しいビジョンを浸透させるために、ベスト・プラクティスの例を社員と共有する機会も必要だったため、自薦・他薦を問わずエントリーを受け付け、全社員が投票する「VSN Award」という表彰制度を創設しました。毎年、エントリー数・投票数は増え続け、「VSN Award」を受賞することが社員にとって一つの目標となるまでになっています。
――自分自身も審査をするポジションを与えられると意欲的に参加できそうですね。
塩田さん:上司が一方的に選出したり、営業成績などの数値だけで判断する表彰ではないため、社員全体からの公平な評価を実感することができると思います。
また、エントリーされた事例を見て、「来年は自分も手を挙げよう」「頑張っている仲間を推薦しよう」と次のアクションにもつながっています。また、受賞した社員の行動を取り入れてみよう、という習慣が生まれるなどの派生効果も多く、好循環となっています。
――そうしたイベントの機会があると、派遣先に常駐しているエンジニアでもVSNの一員であることという意識が強くなり、連帯感がもてそうですね。
共に働きたいエンジニアは、仕事を自分ごととして完遂できる人
――現在のVSNの強みはどんなところにあるとお考えですか?
塩田さん:リーマンショックのような、世界恐慌は今後も想定しておく必要があります。昨年も、派遣エンジニアの受け入れを全て廃止するという決断をされたお客さまがいましたが、その中で唯一当社だけ契約を継続していただけました。私たちを真のパートナーとして認識していただけたことは本当に嬉しいことです。
あらためて、私たちは技術提供のみ行うエンジニアリングサービスからの脱却を図り、コンサルティングの領域で新たな価値を提供する立ち位置を確立することができていると感じています。売上高や事業規模拡大のみを追うのではなく、私たちにしか提供できない品質をこれからも追求していきたいと考えています。
――これからのエンジニアにはどんな姿勢が必要と感じますか?
塩田さん:技術者以外にも言えることですが、どんな仕事でもとにかく主体的に動く姿勢を持つことでしょうか。目の前にある仕事を自分ごととして捉え、それに対して最大限の価値を提供できるよう、完遂することです。
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最後までやりきるって、簡単ではないと思います。課題が多く、なかなか解決まで進まないと疲弊し、次第に他人ごとになる。
「最後まで自分でやりきる」という意識を持続させることで、結果的に自分の存在価値を高めることができると理解できている人はどんな現場でも、どんなことでもやるべきことを完遂し、誰よりも活躍しています。
私がよく話すのは、「自分がなぜVSNを選び、今後この場所で何をしていくのかを常に考えてほしい」ということ。それを実現するために、まず何をいつまでにやるのかを具体的に設定し、さらに四半期・半年・一年と短いスパンの計画に落とし込み、アクションに移しています。
アクション自体は小さなことでもいいんです。ただ、その一つひとつをしっかり完遂し続けて何かを構築できる人というのはすごく重宝されます。その積み重ねが、自身の役割や会社での存在価値につながり、“この会社での働きがい”という気づきにもつながってくるのではないでしょうか。
3,300名の全社員が同じ志を持ち、会社そのものの価値を高められる存在であって欲しいと思います。
取材・文/ドラドナッツ 撮影/菊池友理
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