控えめすぎる社長が経験した、不運すぎるIT黎明期
――いきなりですが、今まで仕事をしていて楽しいと思ったことがない、というのはどういうことでしょうか?
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鷲山さん:エンジニアとして働くようになってから今までずっと、仕事が楽しいと思ったことはありません。そもそも、あまりこの業界のことを知らないで入ってしまい、入社してすぐに金融業界の客先に出されたんですが、それまでエンジニアの経験はもちろん、勉強もしたことがなかったので、仕事の内容が全く分からず。「コンパイルして」と言われても「コンパイルって何ですか?」と聞き返していたくらいです(笑)。
――なかなかスリリングな状況ですね(笑)。
鷲山さん:なんとかその会社で3~4年働き、金融系の会社をいくつか経験した後、電気機器や車など、色んな業界に送られるんですが、やはり知識がないまま行ってしまうので、お客さんから「まさか仕事の邪魔するために来たんじゃないだろうな?」とすごまれたこともありました。
――それは紹介のミスマッチといいますか、お客さんも経験者だと思っていたら期待されますよね。
鷲山さん:あとから聞いたら、社長が適当に経験があると話していたようです。その次はアメリカに送り込まれて。半年くらいで帰れると聞いていたんですが、一緒に行ったエンジニアが早々と日本に帰ってしまい、人がいなくなったからお前がやれと言われて。アメリカ人のエンジニアは「バーベキューがあるから」と5時半ぴったりに帰るので、その後は私たちが一生懸命働く時間でした。
――なかなか波乱に満ちていますね。
鷲山さん:電気機器の開発の現場で、新しいシステム開発と運用を担当していたんですが、その運用が大変で。夜中に流れるシステムだったため、エラーが出ると夜中に電話が鳴って車で会社に駆けつけなくちゃいけないんですね。おかげで夜は寝付けず、電話が鳴るだけでビクッとなるほど恐怖症になりました。
――だんだん楽しくないという意味が分かってきました(笑)。そんな過酷な働き方でも辞めたいと思わなかったんですか?
鷲山さん:今なら確実に訴えられるような働き方でしたが、その頃は「徹夜で何日も仕事をした」と自慢をするような人がいる時代でしたから、業界全体がそんな感じだったと思います。
それからバブルがはじけて景気が悪くなり、私たちも日本に戻ることになったんですが、取引先の不況のあおりを受けて人員整理が始まり、そこから自分たちで会社を起こそうと前社長が1994年に設立したのがベストブレインです。
謙虚すぎる社長誕生も、やさしすぎて苦労の連続
――心機一転、スタートを切ったベストブレインで、鷲山さんが社長に抜擢された経緯を教えてください。
鷲山さん:創業から4~5年は、受託案件で仕事が安定していたんですが、取引先の規模が大きくなり、私たちでは対応しきれない業務が出てきて契約が終了になったんですね。
「経営も体調も悪いので」と創業時の社長が引退することになったのですが、ほかの人たちが全て拒否したため、私が社長をすることになりました。
――だいぶ後ろ向きな社長就任ですね(笑)。
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鷲山さん:「お前がやらなければ会社を潰すことになる」と言われ、自分のいるところもなくなってしまうし、受けるしかない感じでした。でも私は社長という器ではなく、社長らしい態度や言動をするというのが大変苦手で。今でも人の前に出ることはできれば避けたいくらいです。経営者としては寛容すぎる部分もありますし。
――例えばどんなところですか?
鷲山さん:これまでたくさんの未経験のエンジニアを受け入れてきましたが、教育をして現場に送り出しても、思ったより大変だったとか、ほかの会社に誘われたからとか、みんな技術を覚えてやめてしまうんですよね(笑)。
――最初の教育が一番の投資なのに、辛いですね。
鷲山さん:短い人で3~4ヶ月、ひどいと3~4日で辞めてしまう人もいました。長く働いた人の中にも、心の病気になってしまった社員がいて。
お客さんからうちの社員が会社に来ないと連絡があり、家に様子を見に行くと、ドアを叩いても返事がないんです。郵便受けには新聞が溜まっていて、ちょっとまずいんじゃないかと大家さんに連絡して鍵を開けてもらうと、カーテンを閉め切った暗い部屋の中で布団にうずくまっているんですよ。
無理やり病院に連れて行くと鬱と診断され、それから病院に通いながら自宅療養をしてもらったり、実家で療養してもらったりして、少し回復したので復帰したんですが、ふとしたきっかけでまた再発しまして、毎週病院に連れて行く日が半年くらい続きました。
――…毎週?半年も?
鷲山さん:連れて行かないと自分からは行かないと思ったので。実家に戻るように話をしたら、コミケや秋葉原が好きなので東京にはいたいと言うんですね。
――好きなことなら出かけられるんですね(笑)。
鷲山さん:ご両親とも話し合い、やっぱり1人で住ませるのは難しいと実家に戻られることになりました。その時も、雇用保険がすぐに出ないと困るというので会社都合で手続きをしてあげて。結局、その社員が在籍した約3年のうち、半分くらいは病気のサポートをしていたことになりますね。
「自分と同じ思いはさせたくない」大胆すぎる一面も
――鷲山さんのやさしさは、ご自身がエンジニアとして苦労された経験が影響しているように思います。
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鷲山さん:そうなんですかね。やさしいエピソードに入るか分かりませんが、ベストブレインを立ち上げた頃、数人の部下を連れてチームで客先に行っていたんですが、作業がとてもきつかったこともあり、みんな遅刻や欠勤がすごく多くて責任者である私もすごく責められまして。
確かに休むのは良くないことですが、急に「今週は土日休めないから」と言われて呼び出されることがしょっちゅうの現場でしたから、それが何ヶ月も続くと私も頭にきてしまって。もう少し前からスケジュールを立てられないのかと抗議をしたら、そんなことこっちだって分からないと喧嘩になり、「じゃあみんなで辞めます」と全員一緒に抜けました。
――そういうところはかなり大胆に決断されるんですね。
鷲山さん:4人も帰ってきてしまったもんですから、当然自社にも怒られました。幸い、次の仕事がすぐに見つかったから良かったですが(笑)。
――普段は穏やかでも、世の中の悪いことにはきちんと立ち向かうという感じなんですね。
鷲山さん:自分が理不尽な思いを経験してきているから、できるだけほかの人には同じ思いをさせたくないという思いはあります。
「月曜が待ち遠しくなる会社」を創る仲間を募集
――ストレスのない環境の方が結果的に業務効率も上がりますし、そういう会社でありたいということですよね。鷲山さんはこれからベストブレインをどんな会社にしていきたいと考えていますか?
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鷲山さん:月曜日が来るのが待ち遠しいような、毎日が楽しいと思える会社を作りたいです。
――とてもワクワクする目標ですね。
鷲山さん:今までは月曜日が嫌で嫌でしょうがなかったので。
――着想はネガティブなんですね!
鷲山さん:サザエさんのテーマ曲を聞くと条件反射的に嫌な気分になっていましたから。でも、そういう経験を振り返ると、自分と同じような苦い思いをしてきたエンジニアは少なくないはずなんです。
十分な教育を受けずに未熟なまま現場に投げ込まれ、下の方の階層で作業を淡々とこなす毎日で、40歳、50歳という年齢になると、若い人たちに需要を切り替えられて仕事がなくなる。大量に消費された高年齢のエンジニアをどうするか、というのはこれから社会にとって大きな課題になると思うんです。
――実際に、そのような状況で苦労されているエンジニアは増えていますね。
鷲山さん:多くの会社を見ていると、本当に業界の未来を考えた経営をしているとは思えない時があります。しかるべき教育をして環境を与えられたエンジニアは、40歳以上でも技術や知識を評価されて活躍できている現状がある一方で、未だに若くて体力のあるエンジニアを酷使し続けるような雇用を続ける企業もたくさんあります。
この先、彼らが辛い思いをしないように、必要な教育をして快適な環境で作業ができるような社会をつくるために、同じ目標を見つめてくれる仲間が来てくれるといいなと思っています。
――とても大切なことですし、共感してくれる人も多いと思います。具体的には、どんな人を求めていますか?
鷲山さん:すぐに辞めない人ですね。
――まずそこからなんですね。
鷲山さん:やっぱり、今まで苦労をしてきましたので。恐らく辞める人の中にも、ここは我慢できないけれどここは頑張れる、と側面が色々あると思うんです。そういうのを相談しないままに全て辞めるのではなく、共有してくれれば対処できることもあるはずなので、極力こちらが気を配ります。
どんなプロジェクトでも、スムーズに進むこともあれば難関な課題もあると思いますので、長い目で腰を落ち着けて取り組む姿勢を持ってくれれば、その人が挑戦したい夢や目標を会社としてバックアップしたいと思っています。
――経営の部分から任せられる、ある意味コンサルタントのような視点がある人だとやりがいが見いだせそうですね。
鷲山さん:私も自分の年齢を考えると、会社の未来を担ってくれるような人がいれば任せたいと考えています。
――ベストブレインの歴史と信頼をさらに伸ばしていくために、会社を引っ張っていくくらいのパワフルな精神がある人が良さそうですね。次期社長として活躍したいくらいの気概があるくらいでも?
鷲山さん:そんな人が来てくれるなら大歓迎です。
取材・文/ドラドナッツ 撮影/菊池友理
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