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『ちょっと今から仕事やめてくる』成島出監督インタビュー【PR】

監督デビュー直後からあらゆる映画賞を受賞し、2012年の『八日目の蟬』では日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞するなど、今や日本を代表する監督の1人でもある成島出さん。「非常に思い入れがある」と語るベストセラー小説『ちょっと今から仕事やめてくる』の映画化を手掛けるにあたり、撮影の裏話から「仕事」についてまで、貴重なお話を伺いました。
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『ちょっと今から仕事やめてくる』成島出監督インタビュー【PR】

監督デビュー直後からあらゆる映画賞を受賞し、2012年の『八日目の蟬』では日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞するなど、今や日本を代表する監督の1人でもある成島出さん。「非常に思い入れがある」と語るベストセラー小説『ちょっと今から仕事やめてくる』の映画化を手掛けるにあたり、撮影の裏話から「仕事」についてまで、貴重なお話を伺いました。
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厳しい環境しか知らなくて、それが当たり前になっていた助監督時代

――成島監督は、助監督として映画業界に入り修行を積んでこられたとお伺いしておりますが、助監督時代の苦労エピソードなどをお聞かせ頂けますか。

「ブラック」といえば「ブラック」でした。本当に眠る時間が取れなくて。車に荷物を全て積み込んではロケハンに行って、そのまま少しだけ仮眠したりするような日々が続いていましたね。あまりの睡眠不足でフラフラして交通事故に合いそうになったりと「一歩間違えたら死んでいたな…」という体験も多いです。

どうしても、衣装や小道具などの撮影に必要なものを時間までに届けなくてはいけなかったり、予算の少ない作品では、借り物の返却期間を延長する費用がかけられないので、必ず期日までに返却しなければいけなかったりする。そんなことが多発すると、仮眠を取る訳にもいかなくなってくる…そんな時代でした。

――その頃の監督にとって、本作では吉田鋼太郎さんが演じる「山上部長」のような、「怖い上司」の存在はあったのでしょうか。

僕は自主映画を撮っていて「ぴあ(フィルムフェスティバル)」で入選してこの世界に入ったのですが、その時に推薦してくれたのが大島渚さんと、長谷川和彦監督でした。「お前、将来どうしたいんだ」と聞かれて「映画監督になりたいです」って答えたんです。そうしたら、長谷川監督が「じゃあ俺のところに来て、カチンコ叩け。すぐ監督になれるよ」と言うんです。「なれるよ、成島。なれる」って、2人から言われたから「そうか、俺は映画監督になれるのか」と思って(笑)。長谷川監督の「うちに来るか。給料出ないぞ」という言葉に、「はい、行きます」って答えました。

「とりあえず今すぐの現場はないから、シナリオ(脚本)作りを手伝え」「月に5万~10万円くらいは、俺もなんとかフォローするから」と言われました。それで、バイトしながらそのまま長谷川監督邸に住み込むことになったんです。

長谷川さんは、業界でも「ゴジラ」と呼ばれるくらい声が大きいことが有名な監督です。とにかく強烈な人。最初がその人だったからか、その後は「怖いものなし」という心境になっていましたね。「厳しいことが当たり前」という感覚になってしまいました。その現場しか知らなければ、それが当たり前だと思うんですよね。

みんな最初は夢や希望を持って入社するけれど、だんだんと疲れてきてしまう

――「青山」は、厳しい環境に段々と心を病んでいってしまいますが、監督ご自身が厳しい環境を乗り越えられた秘訣はどのようなものだったのでしょうか。

みんな最初は「会社の役に立ちたい」とか、夢や希望を持って入りますよね。青山くんも最初は夢があるんです。けれど、1年、2年とやっているうちに、だんだん厳しい現実に疲れてきてしまう。僕も長谷川監督のところに5年近くいましたが、全然映画を撮ってくれないから「あの話はウソだったのか…」ってなってしまう瞬間がありましたよ(笑)。

最初から「嫌だ、嫌だ」と入社する人はいないと思うんですよ。早い人だと「5月病」みたいに、入ってすぐに深く悩む時期が訪れたりするのかもしれないけれど、人それぞれのタイミングがありますよね。僕の場合は、割と長く持ちこたえられた。「(映画)業界のことを何も知らなかったから」というのが大きいかもしれません。

――山上部長の吉田鋼太郎さんは素晴らしい熱演でした。演出などで心掛けたことはどんなことでしょうか。

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僕も声が大きい上司にずっとついていた経験があるので、今回の鋼太郎さん(山上部長)の怒鳴り方は自然と似ていたかもしれません。「山上部長」の人物像は、「もともと家がそんなに裕福ではなくて、陸上自衛隊に入って、車の免許なども全部取って、3年くらいで退職して、普通の企業に就職した…」というイメージ。そういう方が実際に、結構いるんですよね。そういう方々は、きちんと訓練されているから仕事もキッチリやるし、明治・大正生まれの社長世代にもすごく可愛がられる。お酒も強いから良く飲みに連れていかれたり。鋼太郎さんの役も、そんな感じで作っていきました。

厳しさも、本人は愛のムチのつもりなんですよ。昭和の頃の会社って、全社員で熱海や伊沢・伊香保なんかの温泉旅行に行って盛り上がったりとかも多かった。それを、今みたいに「時間外労働」とか言わなかったですよね。「飲みニケーション」という言葉があるくらい、仕事が終わった後に上司と食事をしたりとか、すごく多かったはずなんですよ。最近は、それがほとんどなくなってしまったのも大きいのかもしれませんね。1人1人、それぞれが孤立化していってしまっている。

――近年、「ブラック」という労働環境への嘆きを、より多く耳にするようになってきた印象もあります。

昔から「ブラック」と感じる環境もちろんあったとは思いますが、辞めたり自殺したりしないような周りのフォローがしっかりとあったのではないかと思います。

――会社員をしている方々の4人に1人が、勤め先を「ブラック企業」だと感じている調査結果を聞いて、どのように思われますか。

何でも考え方だと思うんです。例えば、JALを立て直した稲盛和夫さん。稲盛さんは、良く飲み会をやるそうです。仕事が終わってから、缶ビールを片手に夜中まで…とか。そんな背景を持ちながら、会社を次々と立て直していった。夜中まで飲み会に付き合うこと、これも考え方によっては「ブラック」ですよね。ただ、そのやり方で成果が出ているとしたら、働いている人たちも「帰りたい」と思う瞬間はあっても、稲盛さんと缶ビールで朝まで話したりしたはず。それがきっと、人生が豊かになる理由のひとつにも繋がったのでは、と僕は思います。

この調査結果も多いと言えば多い気もするけれど、そんなものなのかな…という気もします。最近「ブラック」と言われる企業も、僕から見たらそんな風には見えなかったような企業だってある。実際に働いている人たちは、客観的にはわからないから、苦しいのかもしれないですよね。

仕事について悩んでいる人は、とにかく「広い世界を見ろ」

――監督は原作にも大変思い入れがあって、映画化を手掛けられたとのことでしたが、特にどの部分に思い入れが大きかったのかお聞かせ頂けますか。

「ちょっと今から仕事やめてくる」というタイトルですが、「仕事」というのは男にとっては一生のものだと思っています。女性なら専業主婦も僕は「仕事」だと思っているし、働かないとご飯も美味しくないだろうし、「仕事」は生きていく喜びのひとつ。太古の昔からそうだと思います。だから「仕事」は辞めないですよね。本来の題名だったら「会社をやめてくる」という方が合っているのかもしれない。でも「仕事をやめてくる」という言葉に潔さも感じました。

今は若い人たちに少し不思議なところを感じていて。外に出ていくのを怖がっているように思うんですよね。例えば、前作の『ソロモンの偽証』では中学校でのいじめの話を描きましたが、いじめをなくすためにはみんなで声をあげなくてはならない。けれど、次に自分がターゲットになってしまうのを恐れて黙ってしまう。今回の映画でも、青山がオフィスで怒鳴られている時、同僚は全員黙っている。海外の方々の視点から見たら、異常な雰囲気に見えるでしょうね。「なんでこんなに酷い上司なのに、誰も何も言わないんだ」って。「怖いのは山上部長」となりがちですが、本当に怖いのは、物言わぬ周りの人たちだと思っています。

――より一層、その恐怖感を膨らませるように意識して演出されていたりするのでしょうか。

そうですね。ブラック企業の研究や、お話を聞かせてもらう中で、「自己尊厳を奪っていく・自信をなくさせる・自分が正しいと思えないようにさせていく」という洗脳の仕方が共通していたように感じます。怒鳴ったり、じんわりと締め付ける…少しずつ、物言わぬ人たちを作っていく。声を発することができないようにしてしまうんですよね。

――仕事について悩んでいる人に声をかけてあげるとしたら、どのような言葉を選びますか。

それはもう「広い世界を見ろ」この一言に尽きます。

『聯合艦隊司令長官 山本五十六』という映画を撮った時、主人公の五十六さんの言葉に「ちゃんと心の目で、広い世界を見なさい」というものがあります。僕は、それが突破口だと思います。転職する道を選んだとしても、世界を旅したり、例えば貧しい国でも幸せそうに暮らしている姿なんかを、実際に見てみることを勧めたいです。昔の日本、昭和20~30年代のような時期が不幸だったかというと、決してそうではなかったように。

内にこもるのではなくて、広い世界を見る。貯金がちょっとでもあれば、転職をする前に休みを取って、少しでも広い世界を見てみるとか。国内の旅でも、何かが変わると思いますよ。あまり豊かではない地域でも「なぜこんなに幸せそうなんだろう」と考えたら、気持ちが変わってくる。最後は本人の心の問題。心がしっかりしていれば、転職する次の会社もしっかり選ぶことができるでしょう。簡単なことではないかもしれませんが、自分の「心」で広い世界を見て、自分自身をしっかり確立して欲しいですね。

今回の主題歌を歌ってくださったコブクロの小渕さんも、サラリーマン時代にだいぶご苦労されたみたいで「身につまされる」と仰ってくださいました。視野や心が狭くなっていくと、自分で自分にブレーキをかけちゃう。小淵さんはどうしても歌うことを諦めきれなくて、本当に突然「会社を辞めます」と言ったそうですよ。ここまで知っていて依頼したわけではないので、偶然の不思議を感じています。決して特別なことではなくて、誰にでも挑戦できることだと、僕は思います。

――成島監督は今や「夢を叶えた」存在だと思います。その立場から、特にどういった方々に見てほしいでしょうか。

たぶん「明日にも自殺しよう」と考えてしまっているくらい、精神的に追い詰められてしまっている方には、映画を見る余裕はないかもしれないですよね…。そうですね、奥さんや恋人をはじめ、周りの人たち、支える側の人たちに観てほしいかな。女性だって、もちろん子育てや家事で疲れているとは思うんだけど。観て感動してくれたら、疲れている彼らの手を引っ張って、拉致して(笑)2人で観てほしい。そして食事しながら、今まで話せなかったようなことを語り合ってくれたら嬉しいです。生活があると簡単に「転職したい」なんて言えなかったりもするとは思うけど、この映画を観て「2人でどこかに行ってみようか」と少しでも思ってもらえたら。そして、これからの未来に繋がってくれたら僕は幸せです。

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