いつも、電車に乗っています
――サラリーマンの役を演じるにあたり、どのように役作りをされていったのでしょうか。
青山の役を頂いたときに、まずはサラリーマンの日常に近づこうと思って、自分でスーツを買いました。そして、スーツ姿で電車に乗るようにしていました。満員電車の中現場に通って、青山の生活リズムとサイクルを自分に叩き込みながら撮影にいどみました。
それから、新橋などに飲みに行って、出会う方々の色々なお話、愚痴などを聞きました。職種や年齢によってスーツの着こなし方も、話し方も、しぐさも違うので、とても興味深かったです。サラリーマンをしている友人にも、実際にどんなことを言われているのか、どういう理不尽さがあるのか聞いたりしましたね。
話をしていると、皆さん仕事が好きなんだなと感じることが多かったです。ただ、僕が演じた「青山」の場合は、周りをすべて自分から遮断してしまった。僕も撮影中は意識的に家族や友人と全く連絡を取らずに、家にひとりでこもるようにしていました。それが一番大変でしたね。
――普段は、ご自身からよく連絡を取られる方なのでしょうか。
家族や友人にはよく連絡をします。友人とは、チェーン店の居酒屋にもよく行きますね。好きなメニューは「梅水晶」です。お酒はあまり強くないのですが、味は大好きなので少しだけ口にしています。
――作品内でも、ビールを飲むシーンがありましたよね。
おいしかったですね。ノンアルコールだったので安心して飲みました。仕事終わりのビールって最高ですよね。あのノド越し、たまらないものがありますね(笑)。
不満や愚痴は誰しも持っていることで、特別な事じゃない
――出演が決まった後で、サラリーマンの方々への見方が変わったことなどはありますか?
昔から満員電車で通学してきたことも大きいかもしれないですが、役者という仕事をさせていただく前から、働いている方々は皆さん「プロ」だと思っているんです。
――「ブラック企業」と言われる設定を体験してみて、いかがでしたか。
何をもってブラック企業というのか難しいところではあるというのが、正直な気持ちです。どの視点で「ブラック」になるのか、その人の物差しでもあると思います。長時間働くからなのか、上からの圧力がすごいからなのか、視点は色々ありますよね。
「パワハラ」とか、いろいろ問題になっていることも、いつからそういう風になっていったんだろうと思います。当たり前のように「ブラック」って言われることも不思議です。学生時代の部活でも、みんな厳しくて、手を挙げられることも時にはありました。けれど、僕はそこに愛があるかないかだと思っているんです。愛があれば、相手は納得してくれるはず。その場ではわからなくても、いずれ理解してくれる。愛がなくなった時点で、反発に変わる。演じてみて、そんな風に思いました。
- 一番気を付けないといけないと思ったのは、青山だけの視点で考えてはいけないということでした。吉田鋼太郎さんが演じられた山上部長や、黒木華さんが演じられた先輩の五十嵐さんをはじめ、みんな色々な思いを抱えて仕事をしている。最初から、ああいう人ではなかったと思うんです。いろいろな圧力やプレッシャーから逃れるために、たくさんのことを抱えた中で、人は自分を見失ってしまうところがあるんだと思います。だからそこを否定するのではなく、青山という存在「だけ」を考えちゃダメだ、と。相手の気持ちをきちんと理解した上で、青山を演じなくてはならないと思いました。
この作品の中でも、山上部長からポロッと「俺も上から…」という言葉をこぼすシーンがあるんです。ふとした時に本当に心の底から出てきてしまった言葉だと思いますね。
――周りにいるサラリーマンのお友達から、悩みを聞いたりもされるのでしょうか。
そうですね。相手の話し方や雰囲気をみて、ただ聞いてほしいだけなのか、アドバイスがほしいのかを判断したりします。
みんな不満はあると思いますし、悩みのない人はいないですね。例えば就職して、自分の思い描いていたものと違うことを突き付けられた時に不満が生じやすいと思うのですが、みんな直面することで、特別な事じゃないと思っています。
役者以外の仕事をするなら、農家になりたい
――会社員をしている方々の4人に1人が、勤め先を「ブラック企業」だと感じている調査結果もあります。青山のような状況の方が目の前に現れた時、どんな言葉をかけられるでしょうか。
僕だったら、まず相手の気持ちや心境を全て聞きたいですね。本気でぶつかってきてくれるのであれば、僕も本気で答えると思います。
人生にはいろいろな選択肢がある。結果に「もしも」はない。そう思います。だから、今、自分が何をするかによって今後が大きく変わってくるのは間違いないと思うし、自分が選択した結果を、他の人のせいにしてはいけないと思っています。
もしかたらそのまま会社にいた方が、今はつらくても光が見えることがあるかもしれない。他の会社に行ったからといって、うまくいく保証はないですよね。どこにいても、自分がどれだけその仕事に対して真摯に向き合って、面白みを見つけられるかだと思うんです。自分の決めたことは、自分でちゃんと責任を持って行動するしかない。
――作品を終えて「役者」というご自身の仕事について、新しい発見や成長を感じたことはありますか?
成島監督に出会えて、今回は「台本に書かれていないシーンの前後の部分を、どれだけ自分の中でイメージできるかというのが大切だ」と教えてもらえました。「スクリーン全体の流れをどう掴むか」ということも、詳しく教えてもらうことができました。これから役者を続けていく上でも、こんな例えを聞かせてくれました。「大きい雲があって、その前に動く小さい雲がたくさんある。その大きい雲が、自分が目指すものだ。その途中には、小さい雲のように自分が目移りしたくなることがいっぱい出てくると思う。でも目移りせずに、自分が見据えたひとつのことに向かって、自分を信じてひたすら突き進んでいけば結果は必ずついてくるよ」と。それが自分の中で大切な言葉になりました。
どんな監督とご一緒しても、学ぶことはたくさんありますね。納得したらそこで終わり、常に勉強だと思っています。次もまた違う感情や思いが生まれてくると思う。それを僕の今後の基盤として、ひとつずつ積み重ねていく。ただ、それだけです。
――役者の仕事以外に、他の仕事や職業をやれるとしたら、どんな仕事に就いてみたいですか。
農家です!木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」という本を読んで感動したことがきっかけで、農業大学に進学したんです。今でも木村さんの講演などに行ったりするのですが、そこで色々な人の輪が繋がって、その方々が野菜を送ってくださったりすることもあります。いつか、そういう方々と一緒に農業について取り組むこともしてみたい、と話しています。僕は今役者の仕事と向き合っていますが、作る側より「どうやって発信して皆さんに知ってもらうか」ということができればと考えるようになりました。人にはそれぞれ役割分担がありますよね。
自分が育てたものって、子供のようにかわいいんですよ。手軽に作れる野菜から、はじめてみるのもいいかもしれませんね。
――俳優の道を進む工藤さんは「夢を叶えた」存在にも思えます。その立場から、特にどういった方々に見てほしいでしょうか。
働いている方、みなさんに見てほしいですね。「自分には、青山のような感覚はない」と思われる方も、いると思いますけど、この作品は仕事だけの話ではなくて、家族の愛や周りの人の愛もきちんと描かれている、愛のたくさん詰まった映画なんです。だから仕事に悩んでいる人だけではなくて、何か悩みを抱えている人には、ぜひ映画館に足を運んでほしいです。何か、小さな光が見つかるのではないかと僕は思っています。
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