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「幸せと成功」は「にわとりと卵」の関係性:前野隆司さんインタビュー【後編】

前編のインタビューでは、エンジニア時代から大学教授へ転職されるまでの経緯を中心にお話をお聞きしましたが、後編では、幸福学の第一人者として、どのようなマインドを持てばより幸せに働くことができるのか、そのヒントを中心にお話を伺います。
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「幸せと成功」は「にわとりと卵」の関係性:前野隆司さんインタビュー【後編】

前編のインタビューでは、エンジニア時代から大学教授へ転職されるまでの経緯を中心にお話をお聞きしましたが、後編では、幸福学の第一人者として、どのようなマインドを持てばより幸せに働くことができるのか、そのヒントを中心にお話を伺います。
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自分の強みを見つけると、ほかの能力も伸ばせる

 

―――少し意地悪な質問をしてもいいですか?前野先生の場合は、「(能力的に)できる」仕事も「(夢として)したい」仕事も、両方で成果を収めることができたからこそ、今が幸せと言えるのではないでしょうか?

僕は何でもできてしまうんですよね…というのは冗談で(笑)。その点においては、まず僕は幸せだったからこそ、成果としても収めることができるようになったと思っています。自己受容、つまり自分の良いところも悪いところもすべて受け入れて、好きでいられることが重要なんです。

僕は昔、国語が苦手だったんですが、会社で文章を書く機会があり、その時に書けるということに気がついて。はじめは苦手でも、鍛えているうちにできるようになっていたんですね。成長が遅かっただけなんですが、ずっと「できない」と思っていた。

 
人はそれぞれ、勉強だけでなく、やさしさや気配りなど、いろんな能力があります。ポテンシャルはみんな持っているのに、受験の能力や、コミュニケーション能力、リーダシップ能力だとか、優秀と言われている能力だけで測ろうとするから、できる人とできない人みたいに分類されてしまうだけ。本当はみんな「できる」んです。
 

能力を伸ばすタイミングが違ったり、得意なものを見つけられていないだけで。脳には1千億個の細胞があるわけですから、うまく活用できればみんなアインシュタイン級になるはず。でも人間は、いろんなところでネガティブな刺激を受けて、自分をどんどん小さくするように生きている。そういう外的要因を取り払い、自己受容すること。そういう自分もいいじゃないかと。そのために得意なものを見つけ、それを頑張っているうちに、ほかの能力も発揮できるようになっていくんです。

 

―――自己受容をしたいのに、どうしても他人の目を気にしたり、他人と比較することで嫉妬したりする人は多いと思います。すべての人が幸せに働くにはどうしたら良いでしょうか?

にわとりが先か卵が先か、なんですが、本当は無能ではないのに、無能と言われている人がいたとします。まずは、この人に向いたものを見つけて、うまく行き始めないと自信が持てないですよね。

自信を持つためには、幸せな状態であることが重要なんです。幸せじゃないと新しいことに目を向けることはできません。能力というのは、自分の得意なことから一つずつ伸びていくものなので、まずはその第一歩として、それぞれの長所や得意分野を見つけること。それに気づきを与えるコーチングのようなプログラムに参加し、自分の良さを見つけて元気になることも一つの方法だと思います。

組織から改革を起こすなど課題はたくさんありますが、僕は全員が幸せな社会は実現できると思っています。一人ひとりの個性や良さをきちんと発掘し、それを需要する社会の実現です。「接客が得意」、「とても優しい」など、それぞれ長所があり、それを意識して自己受容すれば、自分と他人を比べて妬みが生まれることもありません。嫉妬というのは、自己受容ができていない人が持つものなんです。

「あの人は年商150億円だけど、私はやさしさではだれにも負けない」など、すべての人が自分の長所を誇れる社会を実現する。とても難しいんですが、理論的には可能だと思うので、僕は一生かけてそこを目指したいと思っています。


 

ネガティブな転職は失敗する

———転職する人はみな、今より良い条件や環境などを希望して行動すると思いますが、そうした人が幸せな転職を実現するにはどのようなことに気をつけるべきでしょうか?

いろいろあると思いますが、今の職場に抱いている不満を解消することを転職の動機にしているなら、求めている結果は得にくいと思います。僕の周りにも会社に不満を持って同業界内に転職した人がいましたが、転職先でも同じような不満を抱いて状況は改善されなかった。

幸せな人は、楽観的で全体に目が行くという研究結果があるんですが、幸せじゃない人は細かいことや嫌なことばかりに捉われて周りが見えていない。悩みを解決するために転職しても、その原因が会社以外のところにあるなら解決策もほかに探す必要があると思います。

鈍感だと幸せにはなれない

このほか、転職に失敗する人は、あまり感覚が養われていない傾向があると思います。その原因のひとつは調査不足。企業が発信している情報以外に、組織に入ってみないと分からない部分は、同業の人や同じ会社で働く人の意見をきかないと見えてこない。

僕は、転職を決める前に、何人かの先生にお会いして、どんな雰囲気で働いているのかできる限りの調査をしました。面接で質問があるかと尋ねられた時も「仕事は楽しいですか?」と聞いたんですね(笑)。すると、「楽しくないとこんな忙しい仕事はできないよ」と。色々大変ながらも楽しく働いている教授たちの本音を感じることができたので、今の仕事を選ぶことができました。

―――転職会議でも、そういった業界の先輩たちの声を参考に転職を考えることができるように、クチコミとして公開しています。

 
そういう情報は活用できそうですね。都合の良い情報収集ではなく、後で大変な思いをしないように欲しい情報以外にも目を向ける方がいいと思います。2、3歳年の違う人の意見だけではなく、年齢や立場の違ういろんな人と話し、会社の1つの特長に捉われず、全体を見るなど。
 

感覚を鋭敏にしてあらゆる情報を取り入れる力が高いと、転職にもきっと有利です。これだけ調べても、最後は直感で決めるしかないところもあるので、モヤモヤするものを感じたら辞めておくという判断も必要です。後で後悔をしないためにも、普段からいろんな分野にアンテナを張り、自分の心が望む決断ができる人は、幸せな働き方を実現できるのではないでしょうか。

【プロフィール】
前野隆司氏
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長・教授。キヤノン株式会社でのエンジニア職、慶應義塾大学理工学部での教員職を経て現職。研究分野は人間システムデザイン(社会・コミュニティー、教育、地域活性化、農業、NPO、ヒューマンインタフェース、認知科学・哲学など)、幸福学など。著書は「思考脳力のつくり方」(角川新書)、「幸せのメカニズム」(講談社)など多数。
(HP:http://takashimaeno.com/)

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