転職会議のユーザーの声としてよく聞こえてくるのが、「残業しても毎月の給料は変わらない」「サービス残業が平気でまかり通っている」など、残業に対する正当な対価を支払わない劣悪な企業の実情。労働基準法という国で定められた法律があるというのに、多くの企業で残業代の不払いがまかり通っているのは、なんとも不思議な状況だと思いませんか?
労働に対する対価や評価は、法律以外にも労働組合や労働者と事業主の契約など、個別に結ばれる取り決めで調整されることもあり、自分のケースが不正にあたるのかどうか、ボーダーラインを知らずにずるずると働いている人が多いのも事実です。
では、正当な労働とは、どのようなものなのでしょうか?正しい知識を得ると、事業主がどのような待遇で労働者をもてなしているか理解することができます。もし不当な労働を要求する企業だと分かった場合は、然るべきアクションを起こしても良いのです。今回は、そのボーダーラインを正しく知るための知識と、違法だと分かった場合の対処法について、専門機関に詳しいお話を聞いてみました。
取材協力:法テラス(日本司法支援センター)/労働条件相談ホットライン(厚生労働省)
◆1日8時間、週40時間以上働いたら割増賃金
時間外労働は、すべてが割増賃金の対象になるとは限らず、労働基準法や就業規則、労働契約で定められた範囲では追加の賃金が発生しないものがあることも事実です。自分の働き方が法律に守られたものであるか否かを、ケース別のQ&Aにして回答を見ていきましょう。
--終電近くまで残業がある日が続いています。残業代はもらえないのでしょうか?
“残業は、規定の勤務時間後を過ぎて働き続けることや、その仕事のことですが、労働基準法で定められた時間を超える労働のことを時間外労働といい、割増賃金の対象になります。
労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働が発生する場合、事業主は労働者に法律で定められた計算方法で算出した割増賃金を支払う義務があります。”
【POINT】時間帯により、異なる割増賃金が支払われる
多くの人が、多かれ少なかれ残業をしていると思いますが、その具体的な計算方法などを把握できている人は少ないのではないでしょうか。
時間外労働に対する割増賃金は、原則として働く時間によって所定労働時間1時間あたりの賃金に対し、次の計算方法で求められます。
・平日の深夜に及ばない時間外労働の場合:25%以上
・平日の深夜に及ぶ時間外労働の場合:50%以上
・深夜に及ばない休日労働の場合:35%以上
・休日の深夜労働の場合:60%以上
例えば、規定の勤務時間が平日9時~18時(休憩1時間を除く)のA社で、時給1,500円で働くBさんの場合、平日の18時から2時間残業をした場合の残業代は、3,750円。さらに23時まで残業をした場合は、深夜労働とされる午後10時から翌日午前5時での労働に該当するため6,000円加算され、一日の残業代は9,750円となります。
自分が働いた時間帯に応じた割増賃金を計算し、正当な賃金をもらえていないことが分かったという人は、事業主に是正をするよう要求することができます。
--命令や強制はありませんが、事実として定時に帰れないことが多いです。サービス残業ではありませんか?
“サービス残業という言葉は、労働基準法で定めた定義ではありませんが、上記の時間外労働に該当する働き方をしているのに、割増賃金の支払いの事実がない状態を表すのが一般的です。
労働する側は決してサービスのつもりではなく、職場の雰囲気や業務の進行状況で残業せざるを得ない雰囲気で生じている場合があるようです。正当な労働であることが証明でき、それが時間外の労働であるなら、賃金が支払われないことは違法ですので、要求することは可能です。”
【POINT】やらざるを得ない雰囲気でもサービスしなくて良い
上司や事業主からの具体的な指示がなくても、「なんとなく定時に帰りづらい」や「定時に帰りたくても仕事が多くて帰れない」といった、不本意な残業が発生している例は多いですが、それらの労働時間を申告するのが何となくためらわれることから、残業代の支払いに至らないケースが目立ちます。
正当な残業代でも、立証ができなければ、事業主から残業代が支払われることは難しいかもしれません。タイムカードへの打刻など、勤怠管理のシステムが整っていない会社では、労働者から勤務時間の自己申告を行い、残業の事実を証明する必要があります。自分で付けている日記や労働時間を記したメモなどが証拠として認められるケースもあるため、できる限り記録を残しておくことが懸命です。
--毎日やることが多すぎて一日で処理しきれず、家に仕事を持ち帰ってしまいます。これって持ち帰り残業ですよね?
“実際に会社以外での業務を会社が指示していなければ、正当な労働とみなされるための状況が整わず、より良い仕事のためとはいえどプライベートの時間を使っている自主的な行為ととらえられるかもしれません。
残業を推奨しない、残業を禁止するなどの会社の雰囲気や規則などから、会社では仕事ができなくても家で仕事を行う、といったケースもあるかもしれませんが、場所的な拘束がないことや具体的な指揮監督がないなかでの自主的な残業は、労働時間に当たらないととられるかもしれません。”
【POINT】強制されていないなら自主的な労働になる
「一日中会社に缶詰」というライフスタイルを避けるため、家に帰って家族と食事はする時間は持っても、寝る前まで家で仕事の続きをしてしまうという人も多いでしょう。場所を変えるだけで会社での仕事の続きを行うのだから、これも残業だと主張できそうですが、在宅でのテレワークを認める制度を持つ企業はごくわずかで、会社を出たなら残業したとしても証明するすべが少ないのが現実です。
会社外での残業は、実際の業務過多以外にも、「より良い結果を出したいから」、という自主的な労働である場合も多く、この場合は会社による強制ではない労働なので、残業代として支払われることは難しいかもしれません。
労働環境に疑問を感じたら、専門機関に相談を
事業主は、労働者を雇用する際、然るべき手続きを取っているため、労働基準法についての知識も心得ているはず。その上で不当な労働条件を強いるようなら、それは劣悪な行為といえます。自分の職場の労働条件が疑問を覚えるものなら、労働問題に詳しい専門機関に問い合わせをすることをおすすめします。労働基準に関する情報は、日本司法支援センター(通称:法テラス)に電話や面談で相談することができます。法律問題に及ぶもっと踏み込んだ相談をしたいなら、厚生労働省が主催する労働条件相談ホットラインも頼ることができます。
何となくの残業習慣で、プライベートを犠牲にしなければいけない理由はありません。事業主の意識改革のためにも、勇気をもって行動を起こしてみてはいかがでしょうか?
- 日本司法支援センター(法テラス)
- http://www.houterasu.or.jp/
電話番号:0570-078374
平日:9時~21時/土曜日:9時~17時
- 労働条件相談ホットライン
- 電話番号:0120-811-610
月・火・木・金:午後5時~午後10時/土・日:午前10時~午後5時
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